笑顔の葬儀

 去年の夏、九十歳で亡くなられた、おばあさまの葬儀での話です。
 病院から自宅に帰り、通常どおり仏壇の前に安置させていただきました。会館ではなく、自宅葬です。
 「縁側の見えるところに寝かせてやりたいネ」という息子さんにあたる喪主の一言が聞こえてきました。
 理由をお尋ねしたところ、故人はいつも縁側の椅子に座りタバコをくゆらせながら庭を眺めていたそうです。ゆっくりとした時間を過ごせる、その場所が大好きだったとのことでした。
 縁側の方に行くと、ロッキングチェアの横に吸い殻が入ったままの灰皿、そしてヒマワリの咲いた庭がきれいに見えます。まるでそこだけ時間が止まっているかのような、本当に落ち着く空間がありました。
 通常と違う場所に安置するのに少し迷いましたが、お寺様の了承を得て、大好きな所が見えるように安置させていただきました。
 そのまま打ち合わせになりましたが、故人が九十歳と高齢で亡くなられたため、悲しみにあふれた葬儀ではなくて、御喪家のみな様方から、「長生きしたね、今まで本当にありがとう」と、笑顔で送り出してあげたいという希望を聞きました。
 六十歳を過ぎた喪主も、ビックリするほど、明るく気丈ににふるまっておられました。

 庭に咲いていた色鮮やかなヒマワリを棺に入れ、大好きだった縁側から棺を出し、祭壇の花にもヒマワリを入れさせていただきました。
 笑顔があふれる中、通夜、葬儀と進んでいきました。
 最後のお別れのとき、四歳ぐらいのひ孫にあたる女の子が歌を歌い始めました。
 「カーラースー、なぜなくのー、カラスはやーまーにー♪」
 故人はよくお孫さんやひ孫さんに、縁側で歌ってあげていたそうです。
 その歌声が流れたとき、張っていた糸が切れたように、喪主も子供たちも親族のみな様も泣き始めました。そして私も、涙がとめどなく流れてきました。
 これは演出ではありません。まったくの偶然の出来事でした。
 本当に自然な、笑顔と涙あふれる、とてもいい葬儀でした。
 無事葬儀も終わり、後飾り祭壇も縁側と庭が見えるところに作り、骨になっても大好きな庭が見えるように安置させていただきました。
 縁側のロッキングチェアに座り、心から愛するひ孫を抱いて、ゆれながら歌っているおばあさまの姿。本当におだやかな別れになりました。
 25歳 男性 M・T (メモリアルスタッフが見た、感動の実話集『最期のセレモニー』より)

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