サンレー紫雲閣

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ランドセル

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私が駆け出しの新人だった15年前の4月、6歳の男の子の葬儀を担当しました。幼稚園を卒園して春休み半ばの3月下旬、4月からピカピカの1年生になるはずだった、友達と元気良く外で遊んでいた男の子は、その夜、急に咳と熱が出ました。
ご両親は風邪だと思い、翌日自宅近くのかかりつけの個人病院で診察を受け、風邪薬をもらって安静にしていたそうです。4日経っても、5日経っても症状は変わらないため、医師に紹介状を書いてもらい、四月の初めに設備が整っている総合病院で診察をしてもらいました。
結果は即入院。順調に回復し、入学式までには退院できるだろうと担当医の診断により安心していた矢先、入学式前々日の夜、突然男の子の容態が急変し、帰らぬ人となりました。
私が葬儀の打合せにうかがったときはまだ、ご両親は息子さんの死を受け入れられず、信じていた担当医への憎しみと恨み、あるいは現実逃避とショックでまったくお話ができる状態ではありませんでした。
しかたなく、おじいさん、おばあさんと打合せをさせていただきました。
入学式前日の通夜式には、多くの友達とそのご両親が弔問に来てくださいました。入学式当日の葬儀告別式の日、祭壇に飾られたランドセル。おじいさん、おばあさんに買ってもらったランドセル。
うれしくて、うれしくて自宅で背負っていたランドセル。
最後に、出棺前にお母さんが棺の中にランドセルを納め、そっと男の子にかけた言葉。「いってらっしゃい」ほんとうにつらい、つらいお別れでした。今でも小学生のランドセル姿を見るたびに思い出します。

48歳 男性 S・K(紫雲閣スタッフが見た、感動の実話集『最期のセレモニー』より)