ご参列者の方へ
弔問・会葬の心得
心のこもった決別の儀式と遺族への
あたたかい思いやりが故人へのはなむけです。
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1死後直後の段取り
- 死去の知らせを受けたら
- 思いがけない訃報に接すると誰でも動転せずにはいられないものですが、死去の知らせは落ち着いて受けるようにしましょう。電話口で取り乱したり、死去した前後のことをくどくど聞きただしたりするのはいけません。
本人が不在のときは内容を正確にメモして連絡を取ります。また故人と親しい間柄なら、遺族を助けて死亡通知の一部を引き受けるのもよいでしょう。 - 近親者はすぐにかけつける
- 喪家にできるだけ早くかけつけるべき人の範囲は近親者と、自他ともに許す親友です。覚悟していた場合でも肉親の死によるショックは大きく、何から手をつけていいのかわからないというのがふつうです。弔問客を迎える準備、諸手続き、遺体の安置など人手はいくらでも必要なので、お悔やみを述べたら「そのつもりで来ましたから、何でもいいつけてください」と手伝いを申し出ましょう。念のため、泊まり込みのできる準備を整えていくことも遠方からおもむく場合は必要です。喪装のほか、女性ならエプロンなども持参します。
ただし葬儀の進行を会社で取り仕切ることもありますから、出過ぎることのないように十分注意してください。 遠方に住んでいる親族は、到着の日時を知らせておきます。 - 友人・知人の弔問時期
- 友人や知人の場合は、故人や遺族との親しさの度合いで対応が異なります。近親者と同じ身内として手伝うこともありますが、さほど親しくなければ通夜の祭壇が整ったころに弔問するほうがよいでしょう。 ようすがわからない場合でも、喪家に直接電話するのは避けたいものです。僧侶の読経中に電話が鳴るのは迷惑です。取り込んでいる喪家を避け、知人や近所の人に聞いてみましょう。やむをえず電話をしたときは遺族を呼び出したりせず、用件を簡潔に聞くにとどめるのがマナーです。
喪家から電話などで知らせを受けた場合は、とりあえず弔問にかけつけます。服装は地味な平服で、状況によって玄関先で取り次ぎの人にお悔やみを言って、「謹んでお悔やみ申し上げます」などと書いた名刺を渡して帰ります。部屋に通されたら遺族に挨拶をして、霊前に線香をあげましょう。長居をしないのがマナーです。
死亡通知状や人づてに死去を知った場合は、葬儀か通夜のどちらかに出席すればよいでしょう。昔ながらの近親者を中心にした通夜をする場合や自宅が狭いときは、葬儀に出席します。 - 隣近所は協力を申し出る
- 近所の人たちが台所関係を受け持つなど、葬儀を手伝う場合はまとまった行動が必要です。個人なら弔問に行ったとき、何か手伝えないか申し出てみましょう。近所の協力としては、僧侶などの控え室や台所の提供、座布団や茶器を貸す、買い物や雑用などのほか、商店街では葬儀の日の休業などが考えられます。
- 事故死・変死の場合の弔問
- 急死で事情がわからない場合は、喪家からの連絡がないかぎり、弔問などには出向かないほうがよいでしょう。事故死や自殺、子どもの死亡のときは葬儀を密葬だけにすることもあるので、さしでがましいことをしないのが遺族への思いやりです。一般の知人・友人は葬儀に出席しますが、その際も死因にかかわる質問やうわさ話は厳禁です。
- 弔電を打つとき
- どうしても弔問、通夜・葬儀に出向けないときはとりあえず弔電を打ちます。既成の電文もありますが、できれば自分の言葉でお悔やみの心を表したいものです。
通夜・葬儀に出席できなかった場合や、後日死去を知ったときは、葬儀後の初七日などの法要のときに弔問に行くとよいでしょう。遠隔地などの場合は後日、お悔やみの手紙を出します。
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2弔問のマナー
- お悔やみの挨拶
- とりあえずの弔問では、遺族にすすめられたら部屋にあがりますが、短時間で切り上げます。言動は控えめにし、遺族の気持ちを察してそれに沿うことが大切です。服装は地味な平服とし、アクセサリー類は結婚指輪以外ははずします。化粧も薄くしましょう。
遺族に対しては「このたびはとんだことで……心からお悔やみ申し上げます」「思いがけないお知らせをいただきまして、まだ信じられない気持ちです。どんなにかお力落としでいらっしゃいましょう」などと簡潔にお悔やみを述べます。頭を垂れ、声を低くするのが自然です。
心さえこもっていれば、「このたびは……」と言葉につまって深く一礼しても十分気持ちは通じます。
なお、遺族とは面識がない場合には、「以前○○会社でお世話になりました○○です」と簡単に自己紹介をしましょう。
遺族と親しく話す機会があっても、病状の経過などの質問はいけません。遺族が話したいようなら聞き役に徹します。故人の悪口、死因が遺族の手落ちにあるかのような話しぶり、子どもが亡くなった家に子どもづれで行く、弔問客同士で口争いをするなどは、何が原因であっても心ない行動といわれて当然です。
なお、「重ね重ね」「たびたび」「またまた」「重なる」など、不幸が続くことを暗示するとして嫌われる弔事の忌み言葉にも注意しましょう。神道やキリスト教で葬儀をする場合、「ご冥福」「供養」などの仏教用語は使いません。 - 遺体と対面するときの心得
- 遺体との対面は遺族にすすめられた場合だけ行うものです。遺体が傷ついているときや顔が変わったときにはいっさい行わないこともありますから、自分から申し出るのは遠慮しましょう。
対面するときは、遺体の顔のあたりからやや下がった位置に座り、故人に一礼します。遺族が白布をあごのほうからめくるので、畳に手をついたまま対面し、深く一礼し、静かに手を合わせます。「良いお顔をしていらっしゃいます」「おだやかでまるで休んでいらっしゃるようですね」などと、ひと言いたわりのことばをかけるのもよいでしょう。
対面するのがつらいときは「今の私には……」と率直に断ってもかまいません。
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3香典・供物・供花
- 香典の目的
- 香典は「香奠」とも書き、霊前に供える香木をさしたのが、現在ではもっぱら香のかわりに包む金包みをさす言葉になっています。通夜か告別式のときに持参します。
香典には喪家の葬儀費用の負担を少しでも軽くしたいという意味もあります。ごく親しい身内の場合は、とくに葬儀費用の負担といった意味もあります。
香典の金額が、親族、友人、単なる知り合いなど、故人との付き合いの度合いや故人の社会的地位、地方の習慣によって違います。故人が一家の主人や主婦の場合は、多めにしたいものですが、その他の場合はわが家なりの基準をある程度つくるのが賢明です。兄弟同士なども同じ立場の人で話し合ってから出すのもよいでしょう。金額が少ない場合、葬儀の手伝いをするなどの方法で補うこともできます。若い人や会社の同僚では合同で香典を用意することもあります。
なお、金額は偶数と九を避けるのがふつうです。
香典は市販の香典袋を利用するのが一般的ですが、蓮の花のついている袋は仏式以外には使えません。表書きには薄墨を使うのが正式で、中央上段に書きます。中央下段には姓名を入れますが、できれば住所まで入れるのが親切です。内袋には金額も記入しましょう。
表書きは、仏式では「御霊前」「御香料」「御香典」としますが、「御仏前」は葬儀後に使うのが適当です。神道では「御霊前」「御玉串料」「御榊料」「御供物料」、キリスト教では「御花料」「御霊前」とします。水引きは白黒、双白、双銀などの結び切りが適当です。 - 香典の差し出し方
- もともとは祭壇に直接供えるものでしたが、現在では受付または遺族に「ご霊前にお供えください」と言葉を添えて渡します。葬儀と通夜の両方に出席する場合は、葬儀のときに渡します。
通夜にも葬儀にもやむを得ず出席できないときは現金書留封筒を使用して郵送します。一般と同じように整えた香典袋に現金を入れ、お悔やみの言葉を書いて同封します。 - 供花を贈るときの注意
- 花輪を贈るのは、会社や団体、公的な立場にある個人がふつうで、個人的に花を供えたい場合には生花が適当でしょう。花輪を辞退する葬儀も増えているので、贈る前に喪家に確認します。葬儀社に手配しますが、早めに届くようにします。
生花は専門店に注文します。花かご、スタンドなどの形に整えてくれますが、飾る場所の都合もあるので通夜前までに届くように手配しましょう。喪家に問い合わせのうえ贈るのが原則です。 - 供物は宗教によって異なる
- 供物は宗教によって供えるものが違います。仏式では線香、ロウソク、干菓子、果物などですが、仏壇を祭る習慣のない家の場合、線香やロウソクが集まると困ることもあります。神道では干菓子や果物、酒、キリスト教や無宗教の葬儀では生花以外は飾らないのが一般的。地域によっては、そばなどを供えますが、供物を辞退するケースも増えているので、事前に確認が必要です。
祭壇の供物は葬儀社のほうであらかじめ調えてあることが多くなっています。通夜までに届けますが、贈り主の名前が大げさにならないよう注意したいものです。 - 香典・供物・供花の辞退
- 喪家や故人の意向で香典・供物を辞退することがあります。事前に問い合わせましょう。
無宗教葬やキリスト教の葬儀では、辞退することが多くなっています。プロテスタントの場合は生花だけを受け付けることがありますが、名前は出さないのがふつうです。
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4通夜のしきたり
- 通夜への出席、作法
- 最近の通夜は夕方六時か七時ごろから始まり、通夜ぶるまいが終わるのは九時か十時というのが一般的です。定刻の十分前には出向くようにしましょう。
受付で名前を記入するか名刺を渡し、香典を差し出します。
祭壇のある部屋には先客に軽く一礼のうえ、静かに入室します。私語はつつしみましょう。まず遺族に短くお悔やみを述べますが、弔問を済ませているならばていねいに一礼するだけにします。時間があれば、挨拶のあと祭壇に進み、焼香をします。受付がない場合は、まず祭壇に香典を供えますが、このとき香典袋の表書きが、祭壇のほうから見て正面になるように向けて置きます。焼香をしたら、合掌のあと一礼して静かに席につきます。 - 通夜の席次
- 通夜の席次はあまりこだわらないことです。祭壇近くには僧侶、向かって右が遺族・親族、左側が弔問者の席で、一般会葬者は正面を向いた席にするのがふつうです。祭壇に近いほうが上座ですが、混んできたら先着順に詰めて座りましょう。
通夜の儀式の中心は僧侶の読経で、短い法話や説教が続くこともあります。それが終わったら喪主以下参列者が焼香をします。回し香炉でその場で焼香をすることもあります。次席の人に軽く会釈してから焼香をしましょう。 - 通夜ぶるまいの席での心得
- 通夜の儀式が終わると、遺族代表の挨拶があって、別室で親族や故人のゆかりのある人が飲食をします。この通夜ぶるまいの席には、引きとめられたら出席し、ひと口でも箸をつけるのがマナーです。酒も出されますが、酔うのは禁物です。
通夜ぶるまいの席では話題と退出のタイミングが大切です。故人をしのぶ席ですから、知人との話に興じたり、他人のうわさ話などにのるものではありません。商売や仕事、病気の話は避けたいものです。遺族には明日の葬儀の準備もあるので、早めに切り上げましょう。
なお、通夜はにぎやかにするほうが仏の供養になるといって、地方によってはふつうの宴会のように派手に行うことがあります。故人が天寿を全うしたというような場合であれば、これも先人の知恵かもしれません。
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5葬儀・告別式
- 葬儀・告別式は続けて行う
- 葬儀は故人の成仏を祈る儀式で、告別式は故人に最後の別れを告げる行事です。葬儀と告別式は併せて一時間くらいで、続けて行うのが一般的です。会葬者も定刻前には式場に入れるように早めに出向くことが大切です。
- 受付での心得
- 受付では短くお悔やみを述べて記帳するか名刺を渡し、香典を差し出しますが、名刺は左下かどを小さく折ったり、左肩に「弔」の字を書き入れる慣例があります。香典は表書きが相手から見て正面になるように向け、両手で差し出します。なお、香典袋に現金を入れ忘れていることが案外ありますから、式場に着く前に必ず中身、名前を確かめておきましょう。
記帳が済んだらコートや荷物を預り所に預け、合い札を受け取ります。できれば手ぶらで行くようにしたいものです。
受付のあたりには次々と会葬者が続くので、知り合いを見つけても目礼にとどめて式場に入りましょう。式場では一般的な席次に準じて着席します。
告別式会場で喪主や遺族と顔を合わせても、親しくお悔やみをいう機会はないのがふつうです。むしろ遺族をひとり占めすることのないようにし、焼香のとき目礼するだけにとどめます。 - 葬儀・告別式の作法
- 葬儀の式次第は宗教宗派によって違いますが、必要な場合は指示があるので、それに従えば心配いりません。一般会葬者で葬儀に出席した場合は末席につき、焼香も最後に行います。
告別式に移ると、出席者は司会者の指示で焼香をします。規模が大きい葬儀では立式で焼香をすることもありますが、自分の番が来たら遺族席に目礼して香炉の前に進みます。焼香の回数は一度でも二度でもかまいません。正面に置かれた遺影を見て、心の中で故人との別れをします。 - 弔辞の内容と形式
- 弔辞を依頼されたら引き受けるのがマナーです。故人に語りかける別れの言葉が弔辞ですから、自分の心の内を率直につづればよいのです。時間は三分程度にし、内容は①自分と故人の関係、 ②故人の思い出、業績、人柄の紹介、③死を悼む思いと残された者の決意、遺族への励ましなどとするのが一般的です。
巻紙か奉書紙に薄墨で書くのが正式ですが、最近では扱いが楽な、経本の体裁の用紙が使われています。指名されたら、故人に語りかけるつもりで読みましょう。途中でつまっても真心のこもったものであれば、参列者の心に響くはずです。 - 出棺・火葬
- 棺が自宅または式場を出て火葬場に向かう出棺は、会葬者、近所の人たち、世話人や手伝っていた人など全員で見送りましょう。コートや帽子をとり、深く一礼して霊柩車を見送ります。火葬場へ同行する人数は限られますが、遺族から声をかけられたらいっしょに行ってかまいません。
火葬は一時間以上かかるものですが、火葬場の控え室では、葬儀が終わった安心感からついはめをはずしがちです。遺族や身近な人にとって一番つらいのが火葬と骨あげであることを忘れていけません。骨あげは火葬場へ同行した人全員で行います。二人一組で足のほうから、渡し箸の作法で骨を骨壷に納めます。
遺骨が喪家に帰ったあと、精進落としが行われます。現在の精進落としは、遺族と近親者が葬儀の世話役を慰労し、感謝する機会になっていますから、一般の会葬者は遠慮するようにします。